2025/07/20 13:40
今やストリートでも球場でも当たり前の存在となったキャップブランド、NEW ERA(ニューエラ)。けれど、その“当たり前”の背景には、1920年創業という長い歴史と、時代ごとに進化してきたタグやロゴの物語があります。ここでは、ヴィンテージ古着やスポーツカルチャーを愛するすべての方に向けて、ニューエラの誕生から現在までの歩み、ロゴやタグの変遷、そしてヴィンテージ市場での魅力と価値について、じっくりと掘り下げていきます。
◆ 1920年、ドイツ系移民の夢から始まった
NEW ERAの始まりは、1920年アメリカ・ニューヨーク州バッファロー。
創業者はドイツ移民のエルハルド・クック(Ehrhardt Koch)。当時38歳だったクックは、帽子会社での経験を活かし、品質と効率を両立させた製造を目指して「E. Koch Cap Co.」を創業。その後すぐにNew Era Cap Companyへと改名しました。
当初は主にハンチング帽などの紳士帽を製造しており、まだ野球用キャップは手がけていませんでした。
◆ 1934年、MLBとつながる初めてのキャップ
NEW ERAが初めてMLBと関わったのは1934年。
当時のクリーブランド・インディアンス(現・クリーブランド・ガーディアンズ)のために製作したキャップが、MLBとの最初の接点でした。これをきっかけに、NEW ERAはプロチーム用キャップの供給メーカーとしての地位を徐々に確立していきます。
当時のキャップは今のような“ファッションアイテム”ではなく、完全にスポーツ選手用のユニフォームの一部でした。
◆ 1954年、伝説のモデル「59FIFTY」誕生
NEW ERAの象徴的モデルといえば、59FIFTY(フィフティーナイン・フィフティ)。
このモデルは、創業者の息子である**ハロルド・クック(Harold Koch)**によって開発され、1954年に登場しました。
59FIFTYの特徴は以下の通り:
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丸みを帯びた深めのクラウン
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フラットなバイザー(現在はカーブ加工されることも)
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サイズごとの“Fitted Cap”(フィッテッドキャップ)設計
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8パネル構造
このモデルは現在でも、MLB公式オンフィールドキャップとして選手が実際に試合で着用している正規モデル。つまり、「59FIFTY=本物」という構図が今もなお生き続けています。
◆ 1993年、MLB全チームとの独占契約
NEW ERAは長年、複数の球団と個別契約を結んでいましたが、1993年にMLBと公式サプライヤー契約を締結。
これにより、NEW ERAはMLB全30チームのオンフィールドキャップを製造する唯一の公式メーカーとなりました。
この契約が、ブランドの知名度と信頼性を一気に押し上げ、以降NEW ERAは“プロの証”として全世界に知られるようになります。
◆ ストリートとの融合:90年代のカルチャーシフト
1990年代、NEW ERAはスポーツ用品ブランドという枠を超え、ヒップホップやストリートカルチャーと強く結びつく存在となります。
象徴的なのが、New York Yankees(ヤンキース)のブラック×ホワイトの59FIFTYキャップ。
このモデルは、Jay-ZやNasといった東海岸アーティストに加え、N.W.AのメンバーEazy-Eもヤンキースキャップを着用することがあり、NYロゴは90年代ストリートの象徴的アイコンとなった。
また、スケーターやグラフィティアーティストにも愛用され、「被るアイデンティティ」としてのキャップ文化が浸透していきました。
◆ NEW ERAタグの変遷(年代順リスト)
①【〜1980年代初頭】
筆記体ロゴタグ(Script Logo)
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白地に青の筆記体「New Era」ロゴが印字されたシンプルなラベル
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“MADE IN U.S.A.”の表記あり
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使用例:ハンチング、初期MLBキャップ、PRO MODELなど
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現存数は少なめで、コレクター人気が非常に高い
②【1980年代前半〜1990年代中盤】
キャップロゴタグ(Cap Logo)
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「NEW ERA」の文字がキャップ型にデザインされたロゴを使用
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白地または黒地の織りタグに、赤・青・黒などのカラー展開もあり
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“MADE IN USA”の文字やサイズ表記と併記されていることが多い
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使用例:警察・軍隊・企業プロモ用、MLB/NFL/NBAの販促モデルなど
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筆記体タグと併用されることもある
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現行品には一切使われておらず、過渡期ならではの貴重なデザイン
③【1990年代前半〜中盤】
PRO MODEL / DIAMOND COLLECTION タグ
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MLB/NFL向けに使用された実用モデル用タグ
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「PRO MODEL」や「DIAMOND COLLECTION」などの文字が追加
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MLBのロゴと共に記載されることも多く、本格派仕様の証
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筆記体やキャップロゴと並行して使われるケースあり
④【1990年代後半〜2000年代初頭】
Authentic Collection タグ
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MLB公式ライセンス商品の証である「Authentic Collection」の表記
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MLBロゴ、New Eraロゴが同時に織られたタグ
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ホログラムシールや製造国ラベル(バングラデシュ、ドミニカ製など)も併記されるようになる
⑤【2000年代以降〜現在】
フラッグロゴタグ(Flag Logo)+QR・洗濯表示
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現在の象徴となっている“フラッグ型NEW ERAロゴ”を使用
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洗濯表示・サイズタグ・製造国・ライセンス情報・QRコードが一体化
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MLB/NBA/キャラクターコラボ・ストリートブランドなど全モデル共通
✴️補足:タグは併用されることもある
一部の90年代キャップでは、筆記体タグ+PRO MODEL、またはキャップロゴタグ+洗濯ラベル、など複数のタグが同時に縫い付けられている例も存在します。
この場合は、全体の仕様(アンダーバイザー、スナップ、刺繍スタイル、製造国)などとあわせて総合的に年代を判断するのが基本です。
◆ ヴィンテージNEW ERAの価値と現在の市場
とくに1990年代以前に製造されたUSA製のNEW ERAキャップは、現在のヴィンテージ市場で非常に高く評価されています。
注目ポイント:
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グリーンアンダーバイザー
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筆記体ロゴタグ+PRO MODEL表記
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MADE IN USA表記
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アクリルウール素材の質感
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オールドチームロゴ(例:モントリオール・エクスポズ、旧ロゴのレッズなど)
状態やチームによりますが、1〜2万円超で取引されることも珍しくありません。とくにキャップロゴ入りや非売品モデルはさらに希少です。
◆ 現代のNEW ERA:カルチャーを横断するブランドへ
今やNEW ERAは、スポーツだけでなく、アニメ・映画・音楽・ファッションなど、さまざまなカルチャーと融合するグローバルブランドに成長。
代表的なコラボ例:
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マーベル、スター・ウォーズ、ドラゴンボール
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SUPREME、A BATHING APE、STÜSSY
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MLB、NBA、Jリーグ、韓国K-POPアーティストとの連携も活発
さらに、近年はサステナブル素材を使ったモデルや、ジェンダーレスなデザイン展開も進めており、新しい時代のスタンダードを作り続けています。
◆ おわりに|被るだけじゃない、語れるキャップ
NEW ERAのキャップは、ただの帽子ではありません。
それは「時代と文化を被るアイテム」であり、ひとつひとつに物語が刻まれています。
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タグのデザイン
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ロゴの形
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刺繍のチーム名や位置
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製造国、アンダーバイザーの色
そうしたディテールを読み解くことで、そのキャップの背景が見えてくる。
それこそが、NEW ERAが100年以上にわたって人々を魅了し続けている理由です。
あなたのワードローブにも、“語れるキャップ”を。
BoB Vintage Capsでは、そんな1点モノを世界中から集めて紹介していきます。